恐怖心ゼロの女友達



私の周囲の人たち、そして知人や友達は、コロナパニックと対極の場所にいる人たちばかり。自分や家族が感染するなんて思ってもないし、仕事がなくなって生活費に困る!という問題も抱えていない。だからといって自分勝手なふるまいをしているわけではなく、ソーシャル・ディスタンシング(社会距離戦略)の規定を守って大人しくしていても、恐れの波動はまったくない。

恐怖心がなくて強くいることと、現実を見ずに無神経でいることは、似ているようで、大きく違う。

レストランが、テイクアウトのみの営業に制限される数日前に、アメリカ人の女友達の一人が、いつものように、寿司に招待してくれた。1週間前のことだ。

大きな総合病院の横にあるレストランなので、場所を変えて欲しかったのだけど、恐怖心ゼロな彼女にみごとに言い含められてしまった。

席につくなり、落ち着きのない彼女は、私とウエイトレスに向かってこう言った。

「世間は騒ぎすぎだと思わない?私は1月にインフルエンザ予防接種受けたけど、翌日から具合が悪くなって寝込んじゃった。たぶん、コロナ肺炎だったんだと思う。症状が似ていたし。数日寝てたら治ったけどね!」

もしそうだった場合、回復後の感染力がどうなのかもわからない時点で私は即座に不安に陥った。一方で若いウエイトレスの子は、接客業をまっとうしようと顔色ひとつ変えずに聞いていたけど、絶対に動揺していたと思う。

女友達の無神経さに、さすがの私も怒りがこみあげてきた。もしも私が恐怖の中で生きていたら、椅子を蹴飛ばして帰っていたかもしれない。

ただ、仕事をしていない彼女が去年の暮れから離婚騒動で家に閉じこもっていたこと、一緒に外出できる友達がいないこと、毎年インフルエンザ予防接種の副反応で寝込むことを知っていたので、感染の機会はなかったものとして、気を取りなおすことにした。

まずは彼女が近況報告をはじめた。
もともと裕福な彼女だけど、今回の離婚において、日本円にして4億円のキャッシュを元夫から譲り受けることになったそうだ。

だけど、それでは足りないという。弁護士やら銀行や投資会社の担当者等にも連絡をして、色々と計画を練っているところだった。ずいぶん攻撃的になっていて怖いくらいだった。

そうした数字を細かく教えてくれるほど私は信用されているけれど、彼女の変貌ぶりに私はちょっと驚いてしまった。どう見ても、欠乏感でいっぱいになっている。幸せになる理由がたくさんあるのに、すべてが空回りしている。何を話すにしても愚痴しかなくて、これじゃ友達も逃げていくわけだ。

彼女の近況報告のあと、私が話す番になった。2人で大笑いしながら盛り上がったあと、経済的にはくらべものにならないほど対極地にいる彼女が、私に向かってポツリと言った。

仕事が一時なくなってしまったのは気の毒だけど、どうしてそんなに幸せなの?どうしていつもいいことが起きるの?家族ともうまくいっているし、誰からも愛されて、すごく大切にされている。
私には出会いもないし、夫からすら、そんふうに愛されたことはない。これからも出会いなんてないと思う。たとえ出会いがあっても、財産目当てかもしれないと思うと心配になる。。。。

でも、私にはお金があるから、それでいい!

と、幸せそうな顔をするので思わず笑ってしまった。

子供達は問題を抱え、離婚バトルが続き、友達も失いつつある。でも、今の彼女にとって一番の幸せは財産が増えていくこと。

彼女は同い年なんだけど、こんなふうにいつも私にご馳走してくれるし、レストランがガラガラだったこともあり、さっきの若いウエイトレスの子に多額のチップを置いていった。そうした優しい部分を、私はちゃんと知っている。

彼女は私と会うことで、心が軽くなると言うけど、私は彼女と会うことで、別世界を垣間見る。自分の目に見える世界がすべてではないということを、ときどき、忘れそうになってしまうから。




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