夢を持っても持たなくてもいい?


A氏はリモ&タクシーを扱う会社を経営している。
じっとしていられない性格なので、暇さえあれば自らハンドルを握っているが、タクシー運転手になって庶民と接することもあれば、リモの運転手となって超裕福層の顧客と接したりしている。好奇心旺盛な彼はできるだけ客と会話をして人脈をつくり、情報を得る。日々の生活でシンクロが多く、話を聞いていると全然飽きない。



A氏は昨日、こんな写真を撮って私の携帯に送ってきた。


なんとも美しいプライベートジェット。
A氏自身も飛行機の操縦ができるし、かつては小型飛行機を所有してすべての州に飛んだ経験もあるから、こうした飛行機を見ると惚れ惚れしながら写真を撮って送ってくる。

彼の顧客の一人の若手実業家も、これに似たプライベートジェットを持っていて、数か月前にホワイトハウスに招待されてDCに行っていた。共和党の支持者なので、トランプ大統領とツーショット写真を撮り、SNSに載せていたけど、またその人?と返事すると、今日になって会ったとき、こんな話をしてくれた。

『昨日、某有名スポーツアカデミーからハイヤーの手配の電話があって、僕が運転手として行ったんだ。サマーキャンプに来ていた生徒を迎えに来た父親をまずホテルで拾ってから、アカデミーでその子供を拾い、2人を乗せて空港に行った。普通の空港じゃなくて、プライベートジェットの空港だよ。他州から来ているということだった。』

それは有名アスリートたちを次々に輩出させたスポーツアカデミーで、夏休みともなると世界中からキャンパーたちがやって来る。期間は1週間から2カ月近くまで。こうしたキャンプの料金はそれほど高いとは個人的には思わないが、実際に長期留学で寮生活を始めるとなると、どう考えても眉を潜めたくなるほど高額だ。

まあそれは良いとして、お父さんが所有する豪華プライベートジェットはパイロットつき。行き先は自宅ではなく、残りの夏を過ごすハンプトンの別荘ということだった。

そこに行く生徒としては珍しくもないので、特に驚くにはあたらない。
A氏はこんなふうに私に続けた。

『面白いのはね、この写真を撮った直後に携帯にタクシー会社あての電話が来たんだ。タクシーの運転手はみんな忙しくて手がまわらなかったから僕が応答したら、グレイハウンド(格安の長距離バス)のバス停にいる男性だった。タクシーが必要だ。行き先は、まさにそのアカデミーと言うんだよ。

グレイハウンドのバス停からそこへ行く人間なんて聞いたことがないから、何の冗談だろうと一瞬思ったよ。タクシーは今空いていませんって断ることもできたけど、一体どんな奴が何をしに行くのか知りたくなって、面白そうだから僕がハイヤーの車のまま迎えに行ったんだ。』

好奇心旺盛な彼が断わらないわけがない。

ちなみに、彼の会社は、ハイヤーの方は高級車で、タクシーの方は安い車を使用していて、運転手たちもそれぞれ別れているが、彼が運転手となって自分で動き回るときは、タクシーの客も高級車に乗ったりして、結構めちゃくちゃである。

空港から20分ほど離れたところにある長距離バス停に行くと、荷物を持った青年がぽつんと1人で立っていた。どう見てもまだ高校生くらいだった。

挨拶をすると、オーストラリアのアクセントが強かった。

はるばるオーストラリアから、ここから1時間ほど離れた都市の空港に、到着したばかりだという。その空港からここまで来るのに、一番安い交通手段であるグレイハウンドの長距離バスを利用したのだ。きっと、疲れ果てていたに違いない。

君、本当にそこに行くのかい?とA氏は尋ねた。
どう考えても、グレイハウンドに乗る人間は、あのアカデミーには縁がない。

そうだよ。でも、今日は行かないよ。僕が参加する夏のキャンプは明日から始まるから、今夜はエアビーアンドビーの安宿に泊まるんだ。だから、そこまで行ってくれないか。そこに行く市内バスがどうしても見つからないんだ。

この街ではバスはあっても、路線などは分かりにくく、時刻表もないし、利用客はたいて、自動車を持っていない訳ありな人が多かったりする。電車もない。誰もが自動車を所有することが前提となっている街なので、身動きが取れない。アメリカでは珍しいことではないが、旅行者にとっては不便である。

A氏は彼をハイヤーに乗せて、アクセルを踏む前に、いつもの『他人の気持ちをあんまり深く考えないユーモア』でスマホを取り出して、あのプライベートジェットの写真を青年に見せた。

『今さっき、あそこにキャンプに来ていた君と同じ年頃の学生をここに送ってきたんだ。お父さんがこんな飛行機を所有していて、颯爽とハンプトンに去って行ったんだよ。バスで来る子なんて、君くらいだよ。』

すると青年は、誇らしげに言った。

僕は、ずっと自分で金をためてきたんだ!親の金なんて一銭も当てにしてない。

飛行機代もキャンプの費用も自分で稼いだ!そうやって、とうとうここに来た。僕、オーストラリアの高校ですごく活躍して、結構認められているんだよ。だから世界で活躍するスポーツ選手になりたいんだ。夢はまだまだ先だけど、やっと一歩を踏み出せるんだ。

おお、そうなのか。とA氏はちょっと感激して言った。

だから、これは挑戦なんだ。このキャンプで自分の能力を認めてもらって、留学についても交渉してくるんだ。

瞳がキラキラしていたという。

A氏は青年を無事、宿に送ると、彼に何も言わないまま、うんと割り引きした料金を告げた。タダにするとプライドを傷つけるだろうし、正規料金だとタクシーの価格であっても、40分近くの運転なのでかなり高い。でも、その場だけでも、なんとか力になってあげたいと心から思ったそうだ。

『スポーツ選手になって大成功して、いつか、あんなプライベートジェットを所有できる日が来るといいね。』と励まして送り出したということだが、情熱って、他人を感動させるものだと改めて思った。
A氏の話を聞いていた私までじーんとしてしまった。

同じく高校生の私の息子も、ちょうど昨日、大学で行われていた1週間の合宿から戻ってきた。といってもスポーツではなく、高校生を対象にした進学準備のもので、大学の寮で寝泊まりして新しい体験をするキャンプだ。

勉強合宿というよりは新しい体験を通して世界を広げるためのものだと思う。私は、彼がそれに参加することで、たくさんの刺激を受けてくるのだろうと期待していた。そして、その通り、とても楽しい時間を過ごしたようだし、精神的にもさらに自立して戻ってきた。

ただ、将来への夢は、はっきりと形になっていない。それは全然かまわないのだけど、A氏の話にちょっと感動した私は、一瞬、考えてしまった。この情熱の違いは、スポーツ系との違いというだけ?

そう思っていたら、ふだんは読むこともない、メンタリストDaigoさんという方のブログ記事が目に入った。すると、私が思っていることがすべて凝縮されていて、すっかり共感してしまった。




『成功したいなら大きな目標を掲げるべき、一貫性のある目標を追いかけるべき・・・これらは嘘です。特にこれからの時代を背負う子供たちにこのような嘘をつくのはそろそろやめて欲しいです。今目の前のやりたいことに全力を注ぐことが大事なことで、今を生きるということが僕たちが幸せになる唯一の道であり時代は変化していくわけですから子供の頃になりたかった職業と大人になってからなりたい職業は変わるわけです。何が望む仕事なのかが分からないわけです。どんな仕事があるかなんてわかりません。子供達からすると彼らが大人になった時には今ある仕事の半分はなくなっています。その頃から何か一つを目指すということはただのリスクでしかありません。具体的な目標を立てるということはリスクです。』
『想像力を持って今を全力で生きることができていると必ず可能性が見えてきます。これが未来につながります。これが目標であり成果であり夢です。未来が分からない以上僕たちに夢は分かりません。 今に集中しましょう。https://daigoblog.jp/imagination-now/


(自己啓発の罠について書いてあり内容はエイブラハムとも通じています。エイブラハムも「目標は持たないでいい」派です。。。ただ、わくわくする目標なら細かく設定してもいいのですが)

引用元のブログ記事はもっと長くて丁寧に書かれているので、夢や目標を持っていない自分や家族に対してちょっと疑問を持ってしまったという方にお薦めです。ぜひ読んでみてください。

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