オピオイド・クライシスと捨てられた子供たち 【アメリカ】



スーパーのレジで、私の前にいた若い男性が、咳止めシロップ(薬)を買おうとしていた。レジの女性は商品をちらりと見るなり、「ID見せて」と彼に言った。


その男性はちょっと苦笑いして、「僕、そんな若くないんだけどなぁ」と言いつつ、財布から運転免許書を出して彼女に見せた。彼女はにこりともしなかった。

今、アメリカでは、オピオイドが問題になっていて、この州でも3年前に、未成年者の咳止めの薬の購入が違法になってしまった。
個人的には、ちょっとびっくりしてしまう!
つまり、私の高校生の子供が咳でゲホゲホしてても、自分でドラッグストアに行って薬を買うことができないということになる。まあ、それで困るわけでもないけれど。

咳止めには抗ヒスタミン配合のものは、服用するとボ~っとなってほろ酔い加減のようになる副作用があり、大量に飲むと酔っ払い症状に近くなったり、幻覚を起こしたりするが、問題になっているのは、中毒性のあるコデイン(オピオイド)成分。

コデインは、アヘンの一種で、かなり以前にジャスティン・ビーバーが咳止め薬依存症になった話が有名である。

そう言われても、身近な人たちに依存症の人なんていないなぁ。。。

とよーく考えてみたら・・・・いた!(笑)

去年、職場の20代の南米系の女の子が、病気でもないのにしょっちゅう咳止めを飲んでは、眠くなって仕事を休んでいた。そろそろクビになるだろうな、と思ってたら、彼女がある日、ふらふらの頭でやってきて、絶対にしてはいけないことをしでかしてしまった!
詳細は書けないが、絶対に寝てはいけないシーンで寝ちゃったのだ(笑)

当然、その場で即クビになった。今でも伝説の事件となっているし、彼女の場合は依存症ではないのかもしれないが、咳薬をそんなふうに常時してる人を見るのは初めてだったので驚愕した。味なんて、まずいのにね!

そしてつい先週、クライアントと世間話をしていたとき、以前、彼女の自宅に泥棒が入ったという話になった。彼女の旦那さんは医者である。

真夜中に、バスルームを荒らされ、次に夫の書斎を荒らされて、薬を盗まれたそうだ。それも、処方箋がないと手に入らないオピノイドだと言っていた。鎮痛剤なのだろう。

中毒者がそれを目当てに押し入ったなんて怖すぎる!

その昔、マイケル・ジャクソンやホイットニー・ヒューストンなど多くのセレブも合成オピノイドのオーバードーズで亡くなったというし、私には何が何の薬なのか分からないが、

中毒者が増え続けることを懸念して、去年、トランプ大統領がオピオイド乱用対策として密売人に死刑適用を!と言っていたことは覚えている。(日本語ソース






そして、今日出会ったクライアントの話がまたもやシンクロするものだった。

彼女は、大学生の息子がいるシングルマザー。現在、3人の子供達のフォースターペアレント(里親)だというので、びっくりしてしまった。

子供達は6人兄弟姉妹で、3軒先の家に住んでいる彼女の姉が他の3人を保護している。それで子供達は、放課後に一緒に遊ぶことができる。

素晴らしい。慈愛と奉仕の心と覚悟がなければ、とてもできない。

大変ね、と言うと、今はそれを仕事にしてるの、と彼女は答えた。それによる報酬を生活費にしているのだろう。

でも、これ以上に大変な仕事など、あるだろうか。肉親でもない子供達。まったく、躾けができていないし、持病ある子のもいる。ちょっとでも砂糖を口にすると大興奮して喚き散らす。片付けや手伝いはしない。とにかく騒がしい。毎日、色々と大変なようだ。

朝食を作り、片付けをして、車でそれぞれの学校送り、午後になったら迎えに行き、宿題させたり遊ばせたりして、夕食を与える。そして、家事を終える。

月に一度、監視人がついて両親と面会できると言う。でも、親は育児能力がゼロ。子供を育てる意思もない。それで子供たちは、養子縁組ができ次第、里親である彼女の家を去ることになる。

面会があるくらいだから、犯罪や虐待があったわけではないのだろう。だが、ある晩、何かが起きたのだ。警察がやって来て、夫婦を連行し、子供達を保護した。

子供達は施設に連れて行かれて、しばらくの間、小さな部屋で6人が一緒に寝泊まりしていた。親類は誰も引き取りに来てくれなかった。

そうこうしているうちに、彼女とその姉が里親になることに決まった。この子供達は、ラッキーだと思う。兄弟姉妹揃って、近くに住むことができるし、学校に通い続けることもできるのだから。でも、いったい何があったのだろう?

「両親はオピオイド中毒者なのよ。」と彼女が言うので、のけぞってしまった。

先日、フォスターペアレンツをしている人たちの集まりがあって、色々話を聞いてきたんだけど、オピオイド依存で育児放棄してしまう親が増えているらしいの。」と彼女はつづけた。


フォースターファミリー(里親)として彼女のように面倒を見ている人たちの存在はあるし、諸団体がこうした子供達に新しい服や小遣いを支給したり、サマースクールなども無料で提供したりと、システムは整っているようだが、肝心の親たちが中毒になってゆくのを止めなければ、問題は悪化してゆくばかりなのは目に見えている。

帰宅して、ふと思って「オピオイド」「フォスターケア」の英単語でググってみると、次々に関連記事が出てきた。全米規模での問題になっていた。

親が中毒になって育児放棄。子供達はフォスターケアに保護されるが、数が足りない!そうした子供達の保護の予算が足りず、税金が跳ね上がっている地域もある。


肝心の子供達は、中毒になってゆく親を見たり、長く施設に入れられることでトラウマになってしまう。仕方なく育児を引き継ぐ祖父母も増えているのが現状だ。(ソース元PBS

こうしたことで犠牲になってしまう子供達が気の毒でたまらない。

私にはフォースターケアはできないけれど、だからこそ、彼女のような人を心から尊敬するし、考えるだけでも気が遠くなりそうなこの問題が、どうにか解決されてゆくように祈るばかりだ。

それにしても、どうしてこんなに多くの人たちが依存症になってしまうのか。欠乏感がそうさせるのだろうとはわかるものの、どうして子供を捨てるほどまで??

その答えを教えてくれるようなサイトがあった。
人はなぜ薬物依存症になるのか

自分が置かれた状況を「狭苦しい檻」と感じている人の方が、「楽園」と感じている人よりも薬物依存症になりやすいということ、つまり、しんどい状況にある人ほど依存症になりやすいということです。 国家レベルで見れば、薬物汚染が深刻な国は、きまって貧困や経済格差に喘あえぐ「暮らしにくい国」なのです。

なんとも悲しくなる話だ。

でも、貧困や経済格差は辛いとはいえ、育児放棄したり子供を苦しめる言い訳にはならない。





アメリカでは薬物の過剰摂取による死者が年間7万人を超えた。交通事故や銃による死者数をも上回る数で、1日平均200人近くが命を落としている。大きな理由は、新たなオピノイド合成薬「フェンタニル」が急速に広まっているからだ。

“見えない脅威”との闘い 薬物依存国アメリカの今
(2019年5月NHK)

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